病院排水の現状
■近年、新型コロナウイルスによる感染問題が問題となっていますが、各種病院の排水の中で、「剖検・手術」「病理検査」「透析」「感染症病室」「感染症診察室」などの排水(感染性排水)は、高濃度の細菌・ウイルスで汚染されている可能性があります。しかし、多くの病院では他の排水で希釈されそのまま下水道に放流されているのが実態です。
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■河川、湖沼に排水される場合は、浄化槽による処理が必要ですが、排水の基準は大腸菌群の個数による規制のみで、他の細菌・ウイルスの処理基準はありません。
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既存の感染性排水処理設備
■一部の病院では、自主的に処理が行われていますが、多くは「薬品(次亜塩素酸ナトリュウム)殺菌」か「加熱殺菌」です。
■次亜塩素殺菌の場合は、高濃度の薬剤使用が必要で、二次生成物(トリハロメタンなど)による環境破壊や人体への悪影響が問題となっています。
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■加熱滅菌は本来121℃、2気圧での処理が基準ですが、取扱の難しさから近年、常圧・80℃で処理する設備が増えています。しかし、この状態ではノロウイルスを始め多くの菌やウイルスが死滅しないことが明らかになっています。※ノロウイルス:85℃1分以上、ボツリヌス菌:120℃4分以上、炭疽菌を含む芽胞形成菌類:100℃以上
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残留薬剤の問題
■いま急激に問題になっているのが、病院からの抗生物質などの各種治療薬剤の排水への流出です。「剖検・手術」「透析」病室」などで使用された薬剤が主に人体を経由して排水(薬品系排水)に放出され下水道や河川に流れ出します。
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■抗生物質などが病院内で耐性菌を発生させ被害を出していることが知られていますが、排水中の残留薬剤が自然界で多剤耐性菌を発生させことが明らかになり、世界的な問題になっています。政府は、抗菌薬の使用を現状の2/3に削減する対策を平成28年に表明しましたが進展していません。
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■多剤耐性菌による感染は病院内だけの問題ではなく、環境汚染による日常感染が心配されます。
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